今月からの法改正を前にして、さまざまな地域で影響が出始めているのが「2024年物流問題」です。

ドライバーの労働時間の変更を余儀なくされることがありますが、走行距離まで制限されてしまうのでしょうか。

この記事では、2024年問題で起こる長距離輸送についての課題について解説していきます。

物流業界の2024年問題とは

まずは物流業界の2024年問題とは、いったいどのようなことを指すのか解説します。

もともとは2019年4月改定された働き方改革の関連法案の施工で、残業時間の上限を原則として月45時間、年360時間と定められたものになります。

ただし、物流や建設、医療業界では日頃から拘束時間が長いこともあって、猶予期間が設けられていました。

しかし、物流業界でも2024年4月1日以降、拘束時間や時間外労働時間に上限が設けられるようになります。

拘束時間や時間外労働についての基準は以下のとおりです。

	法改定前	法改定後
1日の拘束時間	13時間 最大で16時間　ただし15時間超は週2回まで	13時間 最大で15時間　ただし14時間超は週2回まで
1ヶ月の拘束時間	原則293時間 労使協定の締結しても6ヶ月間で月320時間の上限	原則284時間 労使協定の締結しても6ヶ月間で月310時間の上限
1年の拘束時間	原則3,516時間	原則3,300時間 労使協定の締結しても年間最大3,400時間まで
年間の時間外労働	規定なし	年間の上限が960時間 月平均80時間

 

このように拘束時間の短縮や時間外労働に上限を設けられることにより、従来の経営方針では対応しきれない問題が生じてきます

荷物を運ぶ量に限界があるため、製造業やサービス業はもちろんのこと、消費者にも影響が出てくるのは避けられないことでしょう。

また2024年4月1日からの法改正には時間外報酬の引き上げも含まれており、従来は大企業のみ適用されていた時間外労働が月60時間超の際に生じる50％以上割増賃金率が中小企業にも適用されます。

走行距離の制限は片道250km？

今回の法改正で労働時間が短くなることで、当然1日あたりの走行距離も短くなってきます。

そこでよくいわれているのが1日の走行距離の最長が片道でおよそ250km、往復で約500kmといわれていることです。

物流業界と一口にいっても形態やサービスは多岐に渡るので一概にはいえませんが、仮に1日7〜8時間ほどを運転時間に充てた場合は走行ルートにもよりますが350km〜500kmあたりの走行距離になります。

そのため、片道250km以下といわれることが多くなったようです。

ただし今回の法改正では、連続運転時間は変わらず最大4時間で、距離の制限も一切ありません。

しかし、長距離輸送の場合、単独配送だと片道250km以下に抑えることは難しい場合が生じます。

その際には運送会社で走行距離を考慮した体制を整える必要があります。

2024年問題における影響や対策

2024年問題は物流企業だけでなく、荷主企業や消費者などにも影響が生じます。

運送業が人手不足のまま2024年問題に直面していることもあり、今後は運賃の値上げが想定されます。

そのような場合には荷主企業の収益だけではなく、消費者などにも価格を上乗せすることになるかもしれません。

また、ドライバーの労働時間の制約によって、集荷時間や納品スケジュールの詳細な打ち合わせを荷主企業と行う必要があります。

また小口配送においても、置き配などの再配達防止に向けた対応を消費者が行う時代が到来しているといえるでしょう。

まとめ

片道250kmを超えるような長距離輸送をあつかう運送会社において、2024年問題は深刻な課題です。

少しでも荷物を運べるようにするためには運送会社のみの企業努力では難しく、荷主企業のスケジュール管理や効率化の対策も避けられない状況といえるでしょう。